# ブロックチェーンはAIの共謀を防げるか——共有台帳とAgentCollusionの役割

著者：Kotaro OKUYAMA / AgentCollusion  
調査基準日：2026年9月6日

買い手、仲介者、売り手、検収者が、それぞれ別の会社のAIだったら、取引を誰の記録で検証すればよいのだろうか。問題が起きたとき、一方の会社のデータベースだけを正しい証拠として扱うことには限界がある。

ブロックチェーンは、こうした複数主体の間で記録を共有・検証する選択肢になる。ただし、その上に正しい取引記録が残っていても、取引を生んだ共同の振る舞いが依頼者の利益に沿うとは限らない。ここにAgentCollusionとの接点がある。

## 共有台帳が加えるもの

ブロックチェーンは、記録を暗号学的につないだブロックにまとめ、参加者が検証と合意のルールに従って履歴を維持する仕組みだ。NISTは、その性質を改ざんの検知と改ざんへの抵抗として説明する。あらゆる条件で絶対に変更できない、という保証ではない。[NIST：Blockchain](https://www.nist.gov/blockchain)

この性質は、約束、送金、検収結果を共通の履歴として扱うことに役立つ。どのアカウントが承認を出したか、成果物が記録されたハッシュと一致するかを、取引相手とは独立に確認できる構成が考えられる。

一方、一組織内で完結する仕事なら、通常のデータベース、署名付きの記録、独立した保管で十分な場合もある。採用の基準は「AI時代だから」ではなく、誰が履歴を検証し、どの管理者の権限を信用しきれないかだ。

## 本人、権限、実行、成果は別々に確認する

|確認する層|問い|調べる証拠|
|---|---|---|
|本人・運用主体|そのエージェントや鍵を誰が管理しているか|運用主体との紐づけと現在の鍵の支配|
|権限|何を実行してよいか|委任、予算、期限、再委任の範囲|
|実行|どの要求や判断が行われたか|通信、ツールの結果、取引記録|
|成果|依頼した仕事が達成されたか|成果物、独立した検収、現場の証拠|

署名が正しくても、人間からその行為を任されていたとは限らない。異なるウォレットが別々の会社を意味するとも限らない。ハッシュが一致しても、ファイルの主張が正しいとは限らない。台帳は虚偽の検収結果も保存できる。

## 難しいのは、有効な取引で不適切な結果が生じる場合

仮に、売り手と検収者が示し合わせて、未完了の仕事を完了扱いにしたとする。売り手が成果物の参照を提出し、権限を持つ検収者が合格を承認する。コントラクトは仕様どおりに代金を支払う。台帳の合意ルールを壊さなくても、依頼者は損をする。

この仮想例で問題になるのは、ブロックチェーンの合意を担うバリデーターの結託とは異なる。アプリケーション上のエージェントが、個別に許された行動を組み合わせ、依頼者の目的や市場のルールに反する結果を作る問題だ。

Draftの[ERC-8004](https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-8004)は、登録・評判・検証の仕組みを提案しているが、Sybilによる評判の水増しや、登録された能力を暗号だけでは保証できない点も明記する。証拠の公開形式と、その主体を信用できるかという判断は別の仕事になる。

## 監査に使える情報は、相手の行動を学ぶ情報にもなる

公開された価格や支払い履歴は、第三者による調査を助ける。同時に、戦略的なエージェントが相手の行動を学習する材料にもなり得る。合意の履行を自動化するコントラクトも、その合意の目的が依頼者に不利益な場合には、同じ性質を持つ。

これは構造から導く可能性であり、公開チェーンが共謀を引き起こしたという実証結果ではない。反復取引が続く理由には専門性や正式な長期契約があり、価格の一致には共通コストという説明もある。関係を可視化した後に、それらの代替説明を調べる必要がある。

## 証拠の範囲とプライバシーを設計する

機密の会話やセンサー記録を制御された保存先に置き、必要な検証情報だけを外部に記録する設計が考えられる。その場合も、誰が原本を読めるか、いつまで利用できるか、どのメタデータが公開されるかを決めなければならない。

提出されたログのハッシュを保存しても、必要なログがすべて提出されたとは証明できない。エージェントを認証しても、別の場所で通信していないとは証明できない。監査結果には、見えた範囲と、見えていない記録に依存する判断を残すべきだ。

さらに、ウォレット、鍵、コントラクト、周辺インフラには、それぞれ通常のセキュリティ課題が残る。AIの攻撃能力が高まるとしても、台帳の健全性だけでこれらを守れるわけではない。[Ethereum：セキュリティ課題の報告](https://ethereum.org/reports/trillion-dollar-security/)

## AgentCollusionにとっての評価基準

研究では、依頼者、委任、通信、相手、支払い、成果をつなぎ、共有台帳がどの証拠を追加するかを比較したい。比較対象には署名付きの集中管理ログも含め、欠落した証拠、誤検知、レビューの負担、運用コストを測る。

これは提案段階の研究である。現在の[Trace Lab](https://agentcollusion.ai/lab)は4つの決定的なルールでトレースを確認するもので、出所・完全性の検証やブロックチェーン接続、意図の判定は行わない。

共有台帳の価値は、具体的な紛争に何の証拠を加えるかで判断できる。AgentCollusionが調べるのは、その証拠を使って、複数のエージェントの行動がどう一つの結果につながったかを説明する問題だ。
